佐々木、イン、マイマイン

佐々木、イン、マイマインのレビュー・評価・感想

New Review
佐々木、イン、マイマイン
8

ここまで見入った作品は初めて。役者さんの表現の仕方、色の使い方など空間の見せ方が作為的でなく、かなりスムーズに自分の心に侵入してくる。

話題の映画監督「内山拓也」の3作目の本作。俳優になるために上京した「藤原季節」演じる悠二が高校時代に圧倒的存在感を放っていた「細川岳」演じる佐々木との日々を思い出すというところからストーリーが展開していく本作。
king gnuのボーカル「井口理」が出ているからという理由で鑑賞しに行ったのですが思いも寄らぬ名作に出会ってしまったというのが正直な感想です。
まず第一に出演されている役者さんの表現における人間味が溢れすぎている。というのも主人公の佐々木は学生時代、教室内で発生する「佐々木コール」に呼応して全裸になって周りを盛り上げるような明るくてみんなを楽しませるような人物。そんな大全開で周りを楽しませるムードメーカーの佐々木も父親があまり家に帰ってこない父子家庭という環境、父親のこととなると学校とは全く違う様子に変貌してしまう姿から見えてくる孤独感には感動しました。特に感銘を受けたのは主人公悠二らと遊んでる最中に街中で父親に似た男を発見し、我を忘れて追いかけるシーン。父親からの愛を求めている佐々木の姿と学校での姿一見対照的には見えますが、中身はどっちも自分の存在を認めてほしいという心境なのでは。そう思ってしまうほどの細川岳の表現力でした。

そして魅力的な点はもう一つ、カメラワークと色の使い方が劇的にうまい。
全体的に淡い色合いのシーンが多い本作。そのような作品は最近の邦画ではよく見られますがこの作品はそれに加えて出演者の心境が伝わってくるようなカメラワークがかなりの魅力でした。
佐々木が「三河悠河」演じる晋平とカラオケに行き、そこで出会った「河合優実」演じる苗村と最後別れるシーン。ここが特にたまらなかったです。
晋平が苗村に連絡先を聞けと佐々木に言いながら帰るシーン。この時苗村は立ち止まって佐々木たちを見送っていました
よく見る映画だと苗村側から映して佐々木と晋平のやり取り映すような表現が多いが本作のこのシーンはずっと佐々木たち側から映しており、連絡先の聞かれ待ちをしてる苗村の様子を映しているのです。このシーンの登場人物全員の心境がぐんぐん伝わってきた感じ。たまらなかったです。

全体的に人間味に溢れた本作。かなりスムーズに視聴者の心に入ってくるのでぜひご覧ください。