戦車闘争

戦車闘争のレビュー・評価・感想

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戦車闘争
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コマーシャルフィルム出身の辻豊史監督が初めて撮った社会派の傑作ドキュメンタリー『戦車闘争』

『戦車闘争』は、2020年製作・公開の辻豊史監督の日本映画です。副題は『SAGAMIHARA, YOKOHAMA 1972-20XX』。プロデューサーの小池和洋が企画、調査を行い、54人の証言者を集め、インタビューを行いました。1972年、神奈川県相模原市から横浜市にかけて起こった戦車搬出阻止闘争に関する政治ドキュメンタリーとして仕上がっています。
1972年の政治闘争・戦車搬出阻止闘争に参加した一般市民をはじめ、当時、運動を阻んだ機動隊(警察官)、米軍から依頼されて搬出を行った日本の輸送業者、また運動の中心となった相模原・西門交差点付近の地元商店の人々などにインタビューを行い、戦車闘争という事象をどのように捉え得るかについて、政治評論家、研究者、歴史家、ジャーナリスト、政治家、政治家秘書、作家などに意見を求めています。当時に撮影された8ミリフィルムの映像をはじめ、写真、新聞記事、図表、イラスト、テロップなどが使用されています。情報集めは、本作の構想を数年にわたり温め、入念に準備を重ねて来たプロデューサー小池和洋が、居住している相模原市の人脈や地の利を活かしたことで実現しました。ナレーターの泉谷しげるも、映画に登場し、当時の相模原や新宿フォークゲリラの様子などを語っています。
マエキタミヤコは、「きわどい内容なのに、ほのぼのした不思議なテイスト」と評し、「リズミックな編集、BGMにトボけたピアノ、超絶技巧のドラム、引き伸ばされたような音のギター」を使用したことに特色を指摘しました。また、通常は隠されるべき照明やマイク、カメラ、インタビュアなどが平気で画面に映り込むマルチカメラの撮影方法などを「隙があり、フレームが溶けている」と評してもいます。