和氣あず未

和氣あず未のレビュー・評価・感想

和氣あず未
8

超革命的に声に恋してしまいそう

声優アーティスト、和氣あず未のファーストアルバム。アニメでは様々な役をつとめる彼女だが、歌では幼げな声質で貫いている。可愛く優しい、いわゆる癒やしのボイスで、好感のもてる良曲を歌いこなしていく。感触としては、彼女が主役をつとめた『世話やきキツネの仙狐さん』や『ブレンド・S』での桜ノ宮苺香のような「可愛らしい女の子」の声だ。
これを単調ととるか、一定した声質で引き込まれるととるかは、それぞれだろう。だがそもそもアーティストがアルバムで千変万化の声を響かせるというのは、まあ普通あり得ないことであって、そう考えると和氣あず未の選択は、正解と言えるのではないか。少なくとも私は、落ち着いて彼女の世界に浸れる良盤ととらえた。
このアルバムには声同様に愛らしい曲が満載だ。なにしろリードとなる一曲目のタイトルが『いそげあじゅじゅ』である。あじゅじゅ、というのはファンによる彼女の愛称だ。そんなものをいきなり曲名(それも冒頭で軽快な曲)にもってきてしまうというのが、なんともあざとい。それも、許せるあざとさだ。
キュートなアッパーチューンだけではない。ミニマルミュージックを思わせる九曲目の『恋する日常』では、彼女の儚げな歌唱がたっぷり堪能できる。明るくみせておいて、ふいに鬱めいた声を披露してくるのは、もはや反則といっていい。だがこれもまた、許せる反則だ。というわけで全体を通して、和氣あず未の術中にはまってしまう、いや、はまらざるを得ない一枚だ。
もちろん曲も演奏も趣味が良い。声や歌詞だけでなく、全方位からリスナー心を掴みにくる。彼女を知らない人も、もちろんズブズブのファンも、聴いて損はない一枚だと思う。正直に言って、私はこれで彼女のファンになりました。