セザンヌと過ごした時間

セザンヌと過ごした時間のレビュー・評価・感想

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セザンヌと過ごした時間
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画家セザンヌと小説家ゾラの友情とその破綻を描いた佳作『セザンヌと過ごした時間』

『セザンヌと過ごした時間』は2016年に公開されたフランスの伝記劇映画で、19世紀の小説家エミール・ゾラと画家ポール・セザンヌの間の友情を描き出した作品です。本作に脚本と監督はダニエル・トンプソンが務めました。出演はギュローム・カネ、アリス・ポル、デボラ・フランソワ、サビーヌ・アゼマ。本作はアカデミー賞最優秀外国語賞のづランス出品作となっています。
映画では、セザンヌとゾラが、10代前半から長年にわたる友情を育みながらも、40代後半で絶縁に至るまでの経緯と「その後」が描かれています。 2人が絶縁したのは、ゾラがセザンヌをモデルに執筆したとされる小説『制作』を1886年に発表したことが原因とされていますが、脚本を執筆したダニエル・トンプソン監督は2人がその後も密かに会っていたとする仮説を立て、1888年にゾラの別荘をセザンヌが訪れて再会するシーンから映画は始まります。なお、1887年にセザンヌが「君に会いに行くつもりだ」と書いたゾラ宛の書簡が近年に発見されたことで、絶縁したとされる1886年以降も2人が会っていた可能性が出てきましたが、その時点でトンプソン監督は脚本を既に書き上げていたのです。
この作品は脚色要素が濃厚ですが、19世紀後半という時代の雰囲気をとてもよく描き示しているように思えます。印象派の画家たち、タンギー爺さん、サロン、等々、当時の新興画壇の必須物がこれでもかと登場します。ストーリーの展開はやや暗いものがありますが、不思議ともう一度観てみたくなる作品です。