フランス人による対独協力を執念深く告発した作品『ホテル・テルミュニス』
何度も何度も映画の上映中に、観客はオフュルスの問う問いは「40年以上前に」起こったできごとだと抗議しました。
それが真実ではないならば、その問いを問うことを避ける理由にはならないでしょう。
しかし、真実ではないのです。
映画において重要な点は、ナチスドイツの敗北と共にバルビーの戦争は誰とも終わっていなかったことです。
バルビーにとっての幸運の一つは、その能力(ほとんどが拷問と尋問)は戦後の連合国が共産主義と戦うために役に立ったことです。
それ故に、彼は、さまざまな機関(とりわけCIA)によって使われながら戦争犯罪の追及を免れて最終的に新しい身分を得て南米に移住したのです。
南米で、彼は拷問者の仕事を続けました。
バルビーの居所はついに突き止められて反ナチのグループに摘発され、ボリビア当局によって拘束されて、ドイツで裁判にかけられました。
起訴理由は41人の孤児に収容所送りを宣告したこと。終身刑が言い渡されました。
『ホテル・テルミニュス 戦犯クラウス・バルビーの生涯』は彼の捕縛と裁判と宣告についての映画ではありません。
本作は、人々が彼をいかに記憶していたかについての物語です。
ある者は覚えていたいことだけを記憶しており、別な者は忘れられないことを記憶しています。
この映画で最も身の毛もよだつ独白は、一人の女性が特定の囚人のみを徹底的に拷問した様子を語る場面です。
その囚人は彼女の父だったのです。
監督のオフュルスは皮肉の感覚を高度に発展させた男で、120時間分のインタビューを2時間27分の映画に編集することで、自己矛盾に満ちた瞬間をしばしば選択しました。
『ホテル・テルミニュス 戦犯クラウス・バルビーの生涯』は大作ではありません。
たとえばオフュルスの別の作品、ナチスに協力したフランス人を糾弾した『正義』のように。
本作は作為的にトーンの低くされた、頑固な映画で、うるさい映画で、ナチスは怪物であることに合意するが、バルビーの戦後の歴史がおおいに戸惑わせるがごとくに若干の細部をぼかすことを厭わないことを付け加える男による映画ーほぼそのような作品なのです。
『ホテル・テルミニュス 戦犯クラウス・バルビーの生涯』は、他人たちがもっと無難な話題に話を変えた後でも会話を続ける男による映画なのです。