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評論家・川本三郎の若き日々を回顧した作品を見事に映画化『マイバックページ』

川本三郎が1968年から1972年の『週刊朝日』および『朝日ジャーナル』の記者として活動していた時代を綴った回想録を原作にしています。原作の前半は東大安田講堂事件や三里塚闘争、ベトナム反戦運動などの当時を象徴する出来事の取材談、出会った人々の思い出、当時の文化状況などが新左翼運動へのシンパシーを軸に綴られ、後半は活動家を名乗る青年Kと出会ったことから、朝霞自衛官殺害事件に関わって逮捕され、有罪となって懲戒免職に至る顛末が語られています。雑誌『SWITCH』に1986年から1987年にかけて連載され、1988年に河出書房新社から『マイ・バック・ページ ある60年代の物語』という題で単行本が出版されました。一時は絶版となっていましたが、映画化を機に2010年に平凡社より再刊されています。
映画版は2007年に原作がプロデューサーの根岸洋之から監督の山下敦弘、脚本の向井康介に渡され、約3年をかけて脚本化の作業が行われました。山下、向井はどちらも舞台となる時代には生まれていなかった世代です。通常使われる35mmフィルムではなく、16mmフィルムで撮影され、それを拡大することで映像全体にざらついた質感を与えています。
キャッチコピーは「その時代、暴力で世界は変えられると信じていた」。