赤い影

赤い影のレビュー・評価・感想

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赤い影
9

死んだ娘の棲む霊界との交信を斬新な映像演出によって描いた英国映画の異色作『赤い影』

『赤い影』は1973年に公開されたニコラス・ローグ監督による英語映画作品です。本作はスリラー映画で1971年に発表されたダフニ・デュ・モーリエの短編小説を原作にしています。ジュリー・クリスティとドナルド・サザーランドが娘が事故死した直後にヴェネツィアを訪れた既婚のカップルを演じています。夫は現地の教会を再建する委嘱を受け入れています。夫婦は二人の姉妹に出会います。そのうちの1人は透視者で、娘が霊界からコンタクトを試みており、夫婦に危険が迫っていることを告げます。夫は初めのうち老姉妹の言うことを無視しますが、彼自身も神秘的な視覚を体験し始めます。
『赤い影』は子供の死がもたらす悲しみとその結果の心理に焦点を絞っています。本作は革新的な編集スタイルの点で抜きん出ています。すなわちモチーフと主題が反復される点、同時代の主流の映画の標準によって明示的であった論議を呼ぶ性描写がそれにあたります。また、映画ではフラッシュバックとフラッシュフォワードの技法が使用されており、「予知」の描写をそれで行なっているのですが、それらを実際に起こっていることを知覚している観者の視点に切り替えるために幾つかの場面は切断されたりマージされたりしています。この作品では、映像に対して印象派的なアプローチがとられていて、馴染みのある事物、パターン、色彩を連想させる編集技術を用いることでさまざまなできごとの前兆を暗示しています。
映画の公開以来、公開から時間が経つにつれて作品の評価は高まり、現在に至ってはホラー映画と英国映画に影響を与えた古典的な作品であると認識されています。