コウノトリの歌

コウノトリの歌のレビュー・評価・感想

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コウノトリの歌
10

南北ベトナム視点で描いた傑作の戦争ドラマ

ベトナム戦争勃発の最中、18歳以上の若い男性が米軍に立ち向かうため召集されてベトナム軍に入隊させられ基礎訓練から始まり、やがて戦場に向かうことになった。最初の北爆で次々に仲間が戦死していく中での友人同士の助け合い、そして家族を思い家族のために生き延びようと葛藤する姿を実際に従事した者たちの証言を元に描いた衝撃の実話です。昨日まで仲良かった友人や喧嘩したあった仲の同期達が次々と戦死していき、生き延びたらお互い喜びあいをするシーンがリアルに描かれています。物語の後半で敵の南ベトナムへ潜入して実業家として、そして高官やお嬢様の召使いであるが実は北ベトナム軍の諜報員として生きる現地での葛藤もリアルでした。特に切ないと思ったシーンは北ベトナム軍が南ベトナム軍将校の娘と婚約をすることになるのですが戦争終結に伴い、昨日まで誰にも気さくで優しかった男が実は工作員であると確信した南ベトナム軍将校の娘の心情、そしてそれを書いた手紙が切なくて悲しく感じました。
最後の回想が終わってベトナム戦争に参加した元アメリカ兵がかつて敵だった北ベトナム兵と共に戦争の恐ろしさを分かち合いお互い心を開いて現生の世代へ本当の戦争の残酷さを語っていく形で終わります。僕としては傑作で是非とも見るべきです。