ウォール街(映画)

ウォール街(映画)のレビュー・評価・感想

New Review
ウォール街(映画)
10

ウォール街で働く若手証券マンの栄光と挫折

これからビジネスを志す人達にはぜひ見てもらいたい映画である。中小証券会社に勤めるバド・フォックスは著名な投資家ゴードン・ゲッコーにかけた1本の電話から、アポを取り付ける。ゲッコーは言う。私にとっては数多くかかってくる電話の1本に過ぎないが、君にとっては数少ないチャンスだ。面談してゲッコーはインサイダー取引の情報要員の誘いをかける。初めは気が進まないバドだが、しぶしぶ誘いを受け活動し始める。ゲッコーとも頻繁に会って会食やスポーツジムで汗を流すようになる。一回りも二回りも違うゲッコーは若いバドに頭脳でも体力でも足元にも寄せ付けない。バドは驚きながらだんだんゲッコーに惹かれてゆく。バドの情報によってゲッコーは次々と利益を上げ、バドの収入もうなぎのぼりに上がっていく。仕事、利益を上げることが面白くなりマンハッタンの高級マンション、美人の彼女、潤沢な報酬、欲しいものが次々手に入りWHO AM I?(俺は誰だ?)というくらい舞い上がってしまう。そんな時父親の会社の再建がバドの仕事の案件に上る。何がゲッコーを大物にしているのか、彼の本質は欲だ。やはり会社でコツコツと何十年も務めてきた人の目はごまかせない。ゲッコーの提案に乗らず会社を再建しようとする。その人の生きてきた信条や信念がその人の人生を作る。どんな偉大な師でも弟子は最後には自分の力で生きようとするものだ。自分の成功が全て他人の手の内で踊らされていたと気づいたとき人間は自分の足で立とうとする。彼女に別れを告げたバドの気持ちがよくわかる。デカルトだ。われ思うゆえにわれあり。因果応報、これまで不正で稼いできたバドの業績は、証券取引委員会による証券取引法違反で逮捕という結末をたどることになる。どんなに業績を上げても商売道徳を守らないインサイダー取引で稼いだ実績は砂の城である。ゲッコーの思惑に気づきゲッコーに逆らって父親の会社を守ったまでは良かったが、その行為により逮捕、証券マンとしてのキャリアを絶たれてしまうきついフィナーレが待っていた。