星降る夜になったら

星降る夜になったらのレビュー・評価・感想

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星降る夜になったら
10

願い事が導く悲しき物語

人間誰しもが抱く願い事。
叶ってほしい出来事、叶えたい夢。
そんな願い事を叶えることができると聞いたら誰もが喜ぶに違いない。
願い事した人物の感情が対価であるが。
補習をきっかけに出会った花菱准汰と渡良瀬佳乃は少しずつ距離を縮めていくが、徐々に佳乃は病に侵されていく…。
そんな佳乃を救うために准汰が下した行動は。
この作品で描かれているのは願い事に翻弄され続けた少年と少女の物語。
ある少年はある少女のために。
ある少女はある少女のために。
願い事をした。
誰もが幸せに成ればいいのに。
この物語にそんなハッピーエンドは存在しない。
ページをめくる度に悲しき結末に近づき、そして最後には呆然とする。
願い事によって運命をかき回されてしまった少年少女の悲しい物語がこの作品。
中でも佳乃の生い立ちは読めば読むほど辛くなるが、現実にはこのような虐待を受けている子供がいることを忘れてはならない。
そうやって輝かしい未来が虐待によって奪われることを。
そして願い事をした方々の末路。
「大切な人を救いたい」
そんな思いで必死に願い事をしたのになんで悲しみしか導かないのだろうか。
「キミの忘れかたを教えて」で知られるあまさきみりとが描いた単発作品。
ちなみにタイトルの元ネタはフジファブリックの名曲「星降る夜になったら」。
タイトルからは想像できないくらいほど忘れられない悲しい物語がここにある。