アドルフの画集 / Max

アドルフの画集 / Maxのレビュー・評価・感想

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アドルフの画集 / Max
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アドルフ・ヒトラーの若き日々、夢破れた美術学生時代を描いた佳作『アドルフの画集』

『アドルフの画集』は2002年に公開された英国・ハンガリー・カナダ合作の架空の劇英映画で、ユダヤ人画商マックス・ロスマンと若きオーストリア人画家アドルフ・ヒトラー間の友情を描いた作品です。
本作はナチのイデオロギー下で形成され始めたヒトラーの観念をも描き出しています。また、第三帝国の興隆を示唆する芸術と意匠とそれらの視覚的なアピールがドイツ民族を如何に麻痺させていくかをも探求しています。
ヒトラーが美術家として受け入れられていたら何が起こり得たかという問題も問い続けています。この作品は監督メノ・メイエスのデビュー作であり、メイエスは本作の脚本も手がけています。
本作に関して批評家は概ね好意的な評価を寄せており、英紙『ガーディアン』は「キャリアと運命に関する賢明で説得力のある仮説」であると評しました。他方では同じく英紙の『オブザーバー』は「誤謬からは程遠いけれども、その事実援用の図々しさの点で賞賛に値し、この騒々しい筋書きは真摯な熟考を促すと同時に、軽率な理解も惹き起こしかねない」と意味深長な評を掲載しました。
米国紙に掲載された映画評では「ヒトラーの初期時代を後年の彼の生涯をもって推し量ることは、人生が思いも寄らない運命の悪戯が悲劇的な結果をもたらすことを理解するに通じる」と述べられています。