世界経済が破綻したリーマンショックの中、そのシステムが破綻することを見抜き、手持ち資金を賭けた一握りのアウトサイダーたちの活躍
なにより脚本、原作の面白さに尽きる。最初に、誰もが住宅バブルに浮かれていたアメリカで、低所得者向けの住宅ローン債権が債務不履行や住宅価格の大幅な下落によって紙くずと化すという見通しをみんな信じようとしない。ファンド担当者が債権を多額の資金で購入した後に、自分たちで実地調査に乗り出し、破綻の前触れを強く認識した時でもまだ大手投資銀行やS&Pなどの大手格付け会社はラスベガスで値上がりの公的見解を発表している。ブラッドピット演じるトレーダーが浮かれている若手の投資家相手に、「あんまり調子に乗るな。俺たちはアメリカ経済が破綻したくさんの失業者が出て、アメリカの資産が大幅に目減りし大手銀行が破綻する方向に賭けているんだ。」とたしなめるシーンがあるが、良識ある金融関係者の貴重なコメントだろう。大手銀行や格付け会社の担当者の態度の変わりようがすごい。最初は自分たちの利益拡大を信じ強気と傲慢な態度でアウトサイダーたちを見下しているのだが、自分たちの損失が巨額に膨れ上がっていくにつれ段々血の気が引いていく。連帯責任に持ち込もうとするが結局公的資金の投入という国民の税金目当ての救済策になってしまう。頼れるものは国家でもなく大手金融機関でもなく、自分個人の経済を見通す眼力にかかっているということを改めて感じさせられた。警告している主人公のファンドマネージャーたちも債券を売らずにプールしている(カラ売りを仕掛けない)が最後になって経営者でもあるため債権を処分して何十億もの利益を稼ぎ出す。1大ドラマを見ているようで圧巻だった。何しろ映画のフィクションではなく実話のノンフィクションなのだから。映画のヒットメーカーが興行成績を稼ぎ出す作品を作るコツはできるだけ現実に近づける作品を作ることだとコメントしていたのを思い出す。事実は小説より奇なり、これを地で行く傑作だった。