ヨーロッパ横断特急

ヨーロッパ横断特急のレビュー・評価・感想

ヨーロッパ横断特急
10

捻りの効いた前衛映画

映画『ヨーロッパ横断特急』は、映画監督で作家としてもヌーヴォーロマンの旗手として活躍したフランスのアラン・ロブ=グリエが監督した作品です。1966年に公開されました。
主人公の麻薬密売人が麻薬の受け渡しを依頼され特急で移動するのですが、そこで虚々実々の動きがさまざまにあり、途中で娼婦がスパイのようなことをしたりするなどいろいろあって進んでいきます。
また監督のロブ=グリエ自身がその特急の車内にいて、作品の筋はこういう風に進むというような話を同行者に話したりします。観客はそこで吃驚させられるわけですね。
最前虚々実々と書いた通り、この作品は、密売人が移動中に出会うさまざまな男女の言葉が真実なのか騙すための嘘なのかがわかりにくいのです。そのため、見ているととてもスリリングな感じを受けます。そして監督自身が出て来て映画の説明をするというところが、面白いですね。即ちこの映画はメタ映画なのだと思います。つまり映画に関して映画のなかで思考し考察しているといった趣があるのです。
この作品が公開された時代には英国映画の007シリーズが人気を博していましたが、ロブ=グリエは、あのシリーズとは異なりこの作品に関しては、大衆映画的な枠組みを使いながらも、大衆映画のお約束をひっくり返して前衛的な作品としています。そこがこの作品の面白さの秘密でしょうね。