もういちど生まれる

もういちど生まれるのレビュー・評価・感想

もういちど生まれる
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ふと、僕たちが立ち止まることを許してくれる

「もういちど生まれる」はのちに戦後男性作家として最年少で直木賞を受賞することになる朝井リョウさんが、初めて直木賞候補作に選ばれることになった短編集です。
「直木賞」と聞くとなんだか堅苦しい印象を抱く人も多いかと思います。けど大丈夫!安心してください。
朝井リョウさんはポップで軽い、今どきの私たちにフィットした文章を書く作家で有名です。
きっといつも本を読まないという人でもすらすらと読めるはず。
ドラえもんに出てくる先生は「人の目は前を向いて生きていくために前についているんだ」と言っていましたが、やはりふと立ち止まって生きてみたくなる時があるかと思います。
『気分を盛り上げるためにお酒を飲むようになったのは、いつからだったろう。初対面の人と気兼ねなく話すための架け橋がお酒になってしまたのは、いつからだったろう。』
この作品の登場人物は全員大人と子供のちょうど間にいる存在。一般的に言ってしまえば大学生にあたると思われます。
伊坂幸太郎さんはモラトリアムに甘んじる大学生を痛烈に皮肉りましたが、朝井リョウさんはそんな僕たちだから感受できる何かがあるんだ、とこの作品で伝えてくれます。
何かに気づくためには、一度立ち止まってみなければ。
何かとマンガや歌は立ち止まるなと言うことが多いけれど、やはり立ち止まってこそ見つけられるものもある。
そうやって僕たちが何かを発見するために立ち止まることを、この作品は許してくれているような、そんな気がするのです。