ロックンロールのピークタイム
1998年に発売されたthee michelle gun elephant(以下ミッシェル)の4thアルバム。ミッシェルの中でも最高傑作との呼び声も高く、70万枚以上のセールスを記録しました。
サウンドのスタイルとしてはメンバー自身が結成当初から得意としていたパブロック、ガレージパンクを基調としており、3コードのシンプルな構成の曲がほとんどです。
「とにかくロックンロールを聴きたい」と思った時に、エレクトロっぽいシンセの音が装飾として入っていたりするとがっかりしてしまう事もあるのですが、そういう事は一切やっていないというのが魅力の1つだと思います。
ギター、ベース、ドラムのシンプルな楽器編成でストレートなロックンロールを演奏している、となると懐古主義的に陥りがちですが、このアルバムはなぜかそうはなっていません。聞いていると1998年当時の音である事がハッキリと感じられます。
これは、前述のパブロックやガレージパンクに加えて90年代に流行していたグランジ的な要素も含まれている事が理由としてあげられます。また(これは推測になりますが)同じく90年代に盛り上がっていたThe ProdigyやTHE MAD CAPSULE MARKETSなどのデジタルロックにも劣らない音の作りを目指していたであろう事も感じられます。アルバムに収録されていて先行シングルともなった「G.W.D」を聴いていると「この曲はTHE STOOGESの『SHAKE APPEAL』をThe Prodigyがサンプリングしたらどうなるか、と考えて作られたのではないだろうか」という風にも聴こえます。
サンプリングという事で言うと、フリッパーズギターがサンプリング感覚でネオアコを演奏していたのだとしたら、パブロックやガレージパンクをサンプリング感覚で演奏していたのがミッシェルでした。だから無骨な黒っぽいロックンロールでありながらも妙にお洒落に聴こえるんです。
ポップスに寄りすぎず、ストレートかつシンプルなロックンロールで高セールスを記録したのは偶然ではありません。勢い任せのようでいて必ずしもそれだけではない、非常にセンスよく作られたロックンロールアルバムだと思います。