神童

神童のレビュー・評価・感想

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神童
8

やる気を失っていたピアノの天才少女が、音大志望の浪人生と交流することで音楽に生きる意味を見出してゆく

主人公は神童と呼ばれた13歳の少女である。譜面も楽々読みこなし、演奏するピアノには人を引き付ける力がある。でもどんなに才能に恵まれていてもまだ中学1年生の女の子、多感だし、傷つきやすい脆い繊細な面も持っている。浪人生が気にかけ守りたいと思う気持ちがよくわかる。著名なドイツ人ピアニストの代演という大役を引き受けて、私は音楽だから大丈夫、やり遂げてみせると言ってオーケストラの待つステージへ向かううたに、そこはかとない魅力を感じてしまった。うたにとって音楽とは、ピアノとは何なのか映画が終わってもその答えははっきりとは描かれない。うたのいうピアノの墓場で、父親の弾いていたピアノを見つけ浪人生と楽しそうに一緒に連弾を弾くラストシーンに、登山家ではないけれどそこにピアノがあって弾きたい気持ちになったから弾いたのではないか、若くして亡くなってしまった名ピアニストの父親と時間を共有したいから音楽と関わり自分が音楽になろうとしたのではないか、そんなことを考えてしまった。うたの高校生、大学生になった活躍も映画の続編で続神童、続々神童で見たいところである。音楽で非凡な才能を持っているがゆえに凡人には気づかない人との交流やヒューマンドラマを生きていくのではないだろうか。