群衆の中の一人の顔

群衆の中の一人の顔のレビュー・評価・感想

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群衆の中の一人の顔
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社会派監督エリア・カザンが撮りあげたアンディ・グリフィスのデビュー作

『群衆の中の一人の顔』は1957年に公開された米国の劇映画で、出演はアンディ・グリフィス(本作が映画デビュー)、パトリシア・ニール、ウォルター・マッソー、監督はエリア・カザンです。脚本はバッド・シュールバーグが担当し、自分の短編小説『Your Arkansas Traveler』(1953年に発表した『Some Faces in the Crowd』に収録)を素材にしています。
映画の主人公はラリー・「ロンサム」・ローズ。アーカンサス北部の田舎の小規模なラジオ番組の製作者(ニール)に見いだされたさすらい者です。ローズは最終的にはテレビの全国ネットで有名になります。この登場人物の設定は、脚本のシュールバーグ自身がウィル・ロジャースJr.に出会った経緯に着想を得ています。アーサー・ゴッドフライやテネシー・アーニー・フォードの成功体験も脚本には盛り込まれています。
映画はグリフィスをスターダムに押し上げた記念碑的な作品ですが、公開当初は好意的な批評と否定的な批評が相半ばしていました。数十年を経て、好意的な評価が増えてきて、米国議会図書館の国立フィルム登録簿で保存されることになりました。
公開初期に好意的な批評を寄せた映画監督にフランソワ・トリュフォーがいます。トリュフォーは『カイエ・ドゥ・シネマ』誌で、本作を指して「その重要性は映画批評の次元を超越している、偉大でビューティフルな作品」であるとの言葉を発しています。