ジンジャーとフレッド

ジンジャーとフレッドのレビュー・評価・感想

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ジンジャーとフレッド
10

コミカルで悲しくもヒューマニズム溢れる傑作

映画『ジンジャーとフレッド』は、イタリアの映画監督、フェデリコ・フェリーニが晩年に撮った作品です。
フェリーニの妻のジュリエッタ・マシーナがアメリオ、戦後イタリアを代表するイケメン俳優だったマルチェロ・マストロヤンニがピッポというお笑いコンビを演じています。この2人は1950年代に米国映画界で活躍した大スタージンジャー・ロジャースとフレッド・アステアのモノマネ芸人として活躍していました。それから30年後2人は再会し、クリスマスのTVショーに出演することになりましたが、そこでは馬鹿馬鹿しく愚かしいことが行われるため、2人は悩んだり困惑したりしますが、徐々に昔恋人だったときの気持ちが蘇ってくるという筋です。
この映画が優れているのは、戦後イタリア映画界を代表する代表する2人の名優が台詞回しも見事なのですが、それ以上に表情だけで見事に登場人物の気持ち、心情を表現していることです。そしてその気持ちが変化していくところを巧みに表しています。とりわけジュリエッタは表情がとても豊かで、実にさまざまな心持ちに揺れ動いていることが映画を見ているとよくわかります。それはまさしく演技とはこういう風にするものだと見ている人に教えているような感じです。
監督のフェリーニの演出も巧みで、現代のテレビ界の馬鹿げた性格を痛烈に批判していて痛快です!
江湖にオススメしたいと思います。