ミモザ館

ミモザ館のレビュー・評価・感想

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ミモザ館
10

愛をめぐる悲劇

映画『ミモザ館』は、1935年に製作された仏映画で、監督は名匠ジャック・フェデー、主演は当時フェデー夫人だったロゼーです。
獄につながれた男の息子をミモザ館という宿屋を経営している夫妻が引き取りました。
しかしその後、出所した男が息子を引き取りに来て、主人公夫妻のもとから離れていきました。
こうして10年経ちました。
その後、子どもから頻繁に金の無心の手紙が来るので、そこへ向かったロゼー演ずるミモザ館の女将は子どもがやくざな道に落ち込み、賭博場の主人の情婦とできているのを知り、お金を払ってその情婦ネリーを子どもから引き離しました。
しかし子どもはそのことに絶望して毒をあおって自死してしまいます。
ロゼー演ずる女性は子どもを一人の女性として愛してしまうのですが、その心のありようを見事に描き切っています。
このように丁寧に心理を表した描写は当時の仏映画には結構多いのですが、とりわけこの作品はリアルに描いていて、巧いと唸ってしまいますね。
さらにいえば、この作品には当時欧州を覆っていた暗い世相が反映していて、その美しい映像とともにわたくしたちを魅了します。
『ミモザ館』は、現在の目で見ると文学的な映画と感じられます。
それは即ち映像に頼りすぎていないという意味であり、台詞も磨き抜かれているということです。