サイレント・トーキョー

サイレント・トーキョーのレビュー・評価・感想

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サイレント・トーキョー
10

政治に関心を持たないこと、平和ボケがいかに危険かがわかる作品

この作品はホラーではないが、現実味がとても強くて本当に起こりそうなことに恐怖を感じた。
政治に関心を持たない、危機感を持たず好奇心で爆発予告があった場所に行く平和ボケした大勢の人々、
戦争の悲劇を忘れかけている現代人、悪ふざけで人の恐怖心を煽る行為をする人、マスコミの印象操作など…
本当に起きてもおかしくないようなシーンが多かった。

特に渋谷が爆発するシーンなんかは、本当の戦争のような感じで、原爆資料館で観た写真を思い出してしまうようなものだった。
クリスマスで浮かれていた人々をまるでゴミのように軽々と吹き飛ばしてしまう爆風、
思わず目を瞑ってしまいたくなるほどの強い光、爆発後の人々の叫び声など痛々しいシーンの連続。
おそらくあれ以上リアルに再現してしまうとR指定がかかってしまうからあの程度で留めたのだろうが、
もし実際にこれと同じ規模の爆発が起きたらもっと悲惨でグロテスクな光景が広がっているのだろうなと思う。
でも過去に起きた戦争ではそれよりもっと、それこそ目も当てられないようなものなんだろうなと想像したら背筋が凍るようだった。

爆発を起こした犯人の動機は、戦争を忘れかけている現代人への警告だったが、
確かに戦争は過去のもので自分とは関係のないものと心のどこかで感じていた自分がいたことに気付き少しゾッとした。
もしこの映画のように、政治家が憲法9条を改正して戦争が出来る国になってしまったらどうなるんだろう、
今まで私はそんな風に政治に関心を持っていただろうか?と考えさせられた。

この映画をきっかけに、戦争とは何かを改めて考え、政治にもっと関心を持とうと思えた映画だった。

サイレント・トーキョー
4

サイレント・ムービー

聖夜の東京で爆弾テロ予告。
タレコミを受け現場に向かったTV局の契約社員とたまたま居合わせた主婦。
爆発が起き、罠にハメられ、犯人に仕立て上げられてしまう。
第二の爆弾予告が動画サイトにアップされ、総理との生対談を要求。
不審な行動を取るIT実業家。第一、第二の現場にも姿を見せる。
彼と知り合った女性たちも現場へ。
若者たちが集まり騒ぐ中、大爆発が…!
巻き込まれるも、軽傷で済んだ刑事。第三の爆弾テロを防ごうと奔走。
やがて、一人の元自衛官の男が浮かび上がる…。

名曲にインスパイアされた同名小説を映画化。
監督は『SP』の波多野貴文。同作で見せたポリティカル・サスペンス演出を本作でも発揮。
佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊、中村倫也、広瀬アリス、井之脇海ら豪華ベテラン〜若手のアンサンブル。

最大の見せ場は、第二の爆弾テロ現場となる渋谷。
事件前、怖いもの見たさ…と言うか、ただ爆発を見たいという不純な動機や爆弾なんて無い無いという訳分からん考えで若者たちがお祭りバカ騒ぎ。
現実世界なら問題発言だが、いや映画の世界でも問題発言かもしれないが、私はこのバカどもが吹っ飛ぶ所を見たかった。
VFXを駆使した爆破シーンはかなりの迫力。邦画の中でも爆破やテロの恐ろしさをよく描いたと思う。

元自衛官の男とIT実業家の意外な関係。
そして驚くべき真の爆弾テロ犯は…?

聖夜×テロと言うと、まるで『ダイ・ハード』。
犯人捜し。
主軸となる人々の思惑交錯。
聖なる夜の東京で大事件に巻き込まれた人々の、群像劇×サスペンス×パニック・アクション!

…と、お気付きになるかもしれないが、先に“持ち上げる”このパターン。
そう、凡作であった…。

冒頭、東京タワーの爆破は何だったの…??
にも関わらず、その直後呑気に会食するシーン。

第一の爆破現場で自分の身代わりにTV局のクルーを爆弾の上に座らせる主婦。とんでもねーぜ、このオバハン!(その後の役回りあるんだけど…)。

しょっぱなからイミフな幕開け、イミフな言動の登場人物。
イヤな予感しかしなかった。

それからは話が進んでいくが、一見“ジェットコースター的”なスリリングな快テンポのように見えて、今一つ話の背景が漠然としていて見えてこない。
書き込み不足、説明不足は一目瞭然。
登場人物の配置や関係図も然り。あの人物とあの人物が、あの人物とあの人物が…といきなり言われてもなぁ…。巧みとは言えなかった。

そして邦画サスペンスのありがち残念。
真犯人が予想付いちゃう。
本作も途中で何となく真犯人分かっちゃった…。

真犯人の動機やその原因となったものは賛否分かれそう。
あくまで“完全な”フィクションとして見るか、“あるかもしれない”フィクションとして見るか。
でも見ていたら、話も犯人像も動機も『相棒』っぽかった。いや寧ろ、『相棒』のTVSPの方がよほど面白いのがある。

先日見た『ドクター・デスの遺産』でも書いたが、邦画はサスペンス/ミステリーでもパッとしない作品多いが、それ以上に本作のような作品こそ。
おそらく邦画で『ダイ・ハード』のような路線を狙ったのかもしれないが…、スケールもスリリングさもドラマ性も面白さもヒットも何もかも、あまりにも無謀過ぎた。

タイトルに掛けて言うなら、サイレント・ムービー(不発映画)になってしもうた…。