未知への飛行/フェイル・セイフ

未知への飛行/フェイル・セイフのレビュー・評価・感想

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未知への飛行/フェイル・セイフ
8

偶発核戦争勃発の危機感をスリリングに描いた社会派ミステリー映画

『未知への飛行』は1964年に公開された米国の冷戦スリラー映画で、監督はシドニー・ルメット、原作はユージーン・バーディックとハーヴェイ・ホイーラーによる1962年発表の同名の小説です。
この映画は架空の核戦争の危機を描いています。
出演は主演のヘンリー・フォンダのほかに、ダン・オハイリー、ウォルター・マシュー、フランク・オヴァートン、ラリー・ハグマン、フリッツ・ウィーヴァー、ダナ・エルカー、ドム・デルイーズ、ソレル・ブーケ。
『未知への飛行』が取り扱っているのは、ソ連と米国の間の冷戦の緊張が偶発的な核戦争第一撃を引き起こすまでの過程です。
ソ連による核攻撃開始の誤報によって米国の爆撃機1編隊がモスクワ爆撃に向かうことになります。2000年に小説はテレビ版の作品としてリメイクされました。
リメイク版の主演はジョージ・クルーニー、リチャード・ドレイファス、ノア・ワイル。CBSでモノクロ版として放映されています。
米ソ間の冷戦が最盛期だった1960年代には偶発的な核戦争発生の危険性が指摘されていました。
この映画は、1962年10月のキューバ危機(キューバ島へのソ連製核ミサイルの持ち込みが原因となって発生した第三次世界大戦の危機)に触発されて書かれた原作を余すところなく映像化しています。
『12人の怒れる男』で裁判所室内でのドラマを密度濃く演出することで評価を得た社会派の監督シドニー・ルメットは偶発核戦争勃発寸前の米国大統領・政府高官らのやり取りをホワイトハウスの一室を舞台にして緊張感あふれるやり取りを監督しました。
渋い役者を揃えた配役もさることながら、ルメットの演出手腕が本作をして、類似の核戦争テーマの『博士の異常な愛情』(こちらの監督はスタンリー・キューブリック)のシニカルなブラックユーモアとは一線を画したシリアスドラマたらしめたと言えるでしょう。