人間の運命

人間の運命のレビュー・評価・感想

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人間の運命
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文豪ショーロホフの短編小説をモノクロで見事に映像化したソ連映画『人間の運命』

『人間の運命』は1959年公開のソビエト映画で、ミハイル・ショーロホフの短編小説を原作にしています。監督セルゲイ・ボンダルチュクはこの映画でデビューしました。公開された年のモスクワ国際映画祭でグランプリを受賞しています。この映画の監督であるボンダルチュクについて付言すると、当初は演劇の道を志していたボンダルチュクは1937年に初舞台、1942年までロストフの演劇学院に学んだ後、独ソ戦に従軍しました。このときの体験が映画『人間の運命』に深刻な影響を与えています。1948年、復員後に映画大学を卒業して、同年には映画デビュー。1951年の出演作はスターリンから高評価を勝ち得て、52年、ソ連人民芸術家の称号を与えられました。このとき32歳。この称号の保持者としては最年少です。1956年にはウィリアム・シェイクスピアの名作『オセロ』のソ連による映画化で主人公オセロ役で出演しました。この作品はカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞しています。1959年に前述のように初めて監督したのが『人間の運命』で、ボンダルチュクはレーニン賞を受賞しています。翌年、イタリアのロベルト・ロセリーニ監督の映画『ローマで夜だった』に、国際的なキャストに名前を連ねて出演。1966年に文豪トルストイの長編小説『戦争と平和』が映画化される際には監督に就任するだけでなく主人公のピエール・ベスーホフ伯爵役で出演をしています。完成した同作は西側でも公開されて、米アカデミー賞外国語映画賞も受賞しました。