エネミー・オブ・アメリカ

エネミー・オブ・アメリカのレビュー・評価・感想

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エネミー・オブ・アメリカ
10

あるマイクロチップを持たされたことから、国家から監視され命を狙われることになる男の物語。

ストーリーの発想が面白い。現代社会がいかにデジタルや様々なシステムの中で成り立っているかということをまざまざと見せつけられた。ターゲットの位置情報を得る発信機もごくごく小型化され、靴の中やズボン等、ありとあらゆる身に着けている物に仕込まれてしまっている。そのため偵察衛星の情報や、移動手段の航空機、鉄道、車、徒歩に至るまで驚くほど正確に追尾することができる。生活に必要な資金でも現金を持ち歩かない限りクレジットカード、銀行の口座、すべてが第3者によって操作することができる。NSA,CIA,FBI連邦政府機関と国家の利害で対立したら個人の生活や人生など紙のように飛ばされてしまう。その中で主人公は元NSAのエージェントの協力のもと次々と迫りくるピンチを切り抜けてゆく。元凄腕エージェントを演じるジーンハックマンが私生活ではパソコンの電源も入れられないというのは面白いこぼれ話だ。便利な現代社会のツールに潜む危険さ、脆弱さそういうものを強く感じさせる映画である。アメリカには便利な文明の道具を嫌い、あえて中世のような自給自足の生活を送るサバイバリスト達がいるが、不自由なものの大切さも再認識できた。国家機密の中で働くということは、国家の国益と運命共同体という事実をしっかり認識していきたい。