夜と霧

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夜と霧
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ナチス・ドイツの「夜と霧」作戦に霊感を受けながら、ユダヤ人迫害の過程を描いたドキュメンタリ映画『夜と霧』

『夜と霧』は1955年のフランスのドキュメンタリー短編映画で、監督はアラン・レネ。この映画はナチス・ドイツの強制収容所の解放の10年後に製作されました。映画のタイトルは、ナチス・ドイツによって遂行された誘拐と殺害の作戦「夜と霧」に由来しています。ドキュメンタリーの舞台は、占領下のポーランドに建設されたアウシュヴィッツとマイダネクの放棄された敷地で、収容者の生活の様子が物語られます。映画『夜と霧』はマウトハウゼン-グーゼン強制収容所の生存者である脚本家ジーン・ケイロールとのコラボで製作されました。サントラ音楽の作曲はハンス・アイスラー。
レネは元来この映画の製作には消極的で、オファーを断り続けましたが、ケイロールが脚本を執筆する契約を結ぶと一転して監督を引き受けます。撮影は1955年を通して行われました。撮影時点での収容所跡地の廃墟と当時のフィルムを繋ぎ合わせて作品は仕上げられました。作品の主題が故に、ルネとケイロールは映画の製作とその公開が困難を極めることを痛感しています。というのも、フランス側の検閲がフランス人警察官が暴行を働く場面の削除を求め、また在仏ドイツ大使館がカンヌ映画祭での同作の上映を阻止しようとしたからです。『夜と霧』は今日でも極めて高い評価を得ています。1990年にはフランス全土でテレビ放映されて、人々に「戦争の恐ろしさ」を想起させることになりました。