ファーストラヴ

ファーストラヴのレビュー・評価・感想

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ファーストラヴ
8

タイトルからは思いがけない重く深いテーマ

「ファーストラヴ」は北川景子さん主演で映画化された作品ですが、内容としてはタイトルからは少し想像し得ない重く深いものでした。一人の女性が父親殺しとして起訴されるのですが、北川景子さん演じる公認心理士の真壁由紀と中村倫也さん演じる弁護士の庵野迦葉とともに事件を追っていくごとに見えてくる真相はとても苦しく、痛々しかったです。女性を消費物として見て、父親にも母親にも、誰にも1人間として見てもらえず助けてくれない、そんな聖山環奈を演じた芳根京子さんの演技は圧巻でした。また、それに呼応するかのような由紀の過去も衝撃的であり、2人の過去にただ辛いと思うことしかできませんでした。更には性暴力を受け自傷行為をしていた環奈、私が一番怖かったのは、見て見ぬふりをした環奈の母親の手にも自傷行為の後が見られたということです。
最後に事件の全容が見え、結果有罪となった環奈ですが、由紀と出会ったことで自分が悪いのではないことを知り涙する場面は素晴らしかったです。
性、というモチーフを扱いながら下品なものではなく真正面から性問題と向き合い、観る人の心に残る映画になっていたのではないかと思います。臭い、目に入れたくないものに蓋をするのではなく、顕してくれた良い作品だと感じます。

ファーストラヴ
8

それぞれの「愛」の物語

北川景子さん演じる公認心理士・由紀が、芳根京子さん演じる女子大生・環菜の闇を紐解きながら、自分自身の闇と向き合っていくという構成で、二人の心の内が明らかになるにつれどんどん二人の過去に引きずり込まれ、物語に没頭してしまいました。二人の過去は衝撃的ですがどこか共感できる部分もあり、どのように性と向き合い、大人になっていけばよいのかということを考えさせられました。裁判のシーンでは、大人たちに囲まれながらしっかりと話す環菜に成長を感じましたが、トラウマを持った彼女が徐々に心を開いていく様子をもう少しゆっくりと見られたらなと思いました。
我聞は由紀と迦葉を愛情深く包み込み、それによって迦葉は由紀と家族になることができ、「初めての愛情」が実った三人である。一方で、環菜は初めて好きになった人に自分の人生をかけて証言をもらい、結果救われることはありませんでしたが、自分の言葉を受け止めてもらうことで、最後には初めて愛し愛されることができるようになったのではないかと思います。
内容だけでなく、俳優さんたちの演技が素晴らしく、特に芳根京子さんは掴みどころがない序盤から恐怖に向き合い話す裁判シーンまでの振り幅にとても心動かされました。大スクリーンでの皆さんの演技は迫力があり、また集中して観たいシーンも多いので、映画館で観れて本当に良かったと思います。