東京オリンピック(映画)

東京オリンピック(映画)のレビュー・評価・感想

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東京オリンピック(映画)
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異色の映像構成でドキュメンタリー映画の枠を脱した『東京オリンピック』(監督・市川崑、1964年)

『東京オリンピック』は1965年の日本のドキュメンタリー映画で、監督は市川崑。1964年の東京夏季五輪を描いた作品です。1936年のベルリン夏季五輪の記録映画を撮った、レニ・リーフェンシュタールの『オリンピア』のように、市川の作品はドキュメンタリーの映画製作の技法の中で到達点(マイルストーン)であると考えられています。
映画『東京オリンピック』は競技の勝敗に焦点を当てるよりも、競技の雰囲気や競技者の人間的な側面に焦点を絞っています。本作は洋書『死ぬ前に見るべき1001の映画』(“1001 Movies You Must See Before You Die”)に掲載された数少ないスポーツドキュメンタリーの一つです。
1964年の夏季五輪東京大会は日本政府からはきわめて重要なイベントであると見なされていました。人のインフラの大部分は第二次世界大戦中に破壊されたので、オリンピックは日本を世界に再度アピールして近代化された道路と産業だけでなく交流する経済を見せつける機会であると見なされたのです。
1964年五輪のために日本政府は独自の映画製作に資金を拠出する決断をして、当時世界的に有名だった黒澤明監督に白羽の矢を立てましたが、黒澤の起用は見送られます。このために当初の政府案では名前の挙がっていなかった市川崑に監督のお鉢が回ってきたのです。