てにをは(音楽家)

てにをは(音楽家)のレビュー・評価・感想

てにをは(音楽家)
10

言葉の魔術師、人気の楽曲から隠れた名作まで!

てにをはさんの楽曲に置いて素晴らしいのはその言葉運び。
初めて見つけた「水棲生物と夏の機械」では、人外と恋をした人間の物語を紡いでいました。
ボーカロイド、初音ミクのポップで軽い声音から始まる物語は、いつしか「僕」の気持ちを重ね合うように重く激しい音へと変わっていきます。
それでも、彼はラストに理解します。自分のエゴは決して、「君=水棲生物」を幸せにしないのだと。
だからこそ、彼はラストにこう囁きます。
「半世紀くらいなら平気 待つよ 本でも読みながら 遠い海から合図して」と。
てにをはさんの楽曲には「愛情の中の諦め」があり、それが恋愛曲によくあるエゴイスティックな感情を放棄しているのです。
愛している、だからこそ、手放す。
そんな愛の形は「花喰鳥と恋する少女」や、「イヌガミ邸神懸りミステリヰ」にも見られます。
穏やかな声音で重ねられる歌と言う物語こそが、てにをはさんの真骨頂だと思います。
また、てにをはさんが作成するのは恋愛曲ばかりではありません。
「異国人形館殺人事件」や「古書屋敷殺人事件」など、本格はミステリーにも繋がる楽曲も数多くつくられているのです。
小気味良い言葉遊びが犯人探しの心を湧き立たせ、いつのまにかてにをはさんの作品に引き込まれていきます。皆さんもどうぞ、巣ごもりの中でてにをはワールドに浸ってみるのは如何でしょうか?