東風 / Le Vent d'est

東風 / Le Vent d'estのレビュー・評価・感想

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東風 / Le Vent d'est
9

セルフパロディであり、ビジュアルな実験でもあるゴダールの『東風』

『東風』は、1970年公開のジガ・ヴァルトフ集団名義の作品です。
この集団は映画製作のための過激な共同体で、コアメンバーはジャン-リュック・ゴダールとジャン-ピエール・ゴランでした。
ゴダールの経歴のこの時期のほとんどの作品がそうであるように、監督のクレジットは集団に帰属しており、ゴダール自身、あるいは他の個人の映画作家にはアトリビュートされていません。
ジガ・ヴァルトフ集団の映画の中で『東風』がとりわけ注目を集めたのは、ペーター・ウォレンの影響力のあるエッセイ「ゴダールとカウンターシネマ:東風」がこの作品に言及しているからです。
ウォレンは『東風』がブレヒトの原理「叙事演劇」が「カウンターシネマ」として映画に適用しうると主張しました。
映画の音声は、誘拐されたALCOAの重役の物語で始まりますが、次に筋書きは、革命的なシネマの歴史と政治的な文脈(マルクス-レーニン主義的な自己批判を含めた)、ハリウッドの映画産業に関する長々として講義の場面に転じます。
作品に登場するのは屋外の自然の風景とマカロニウェスタン風の人物たちです。
この2つの映画の構成要素はバラバラで映されることもありますが、相互に絡み合うこともしばしばあります。
サウンドトラックは時折り画面に現れる視覚効果に対応することもありますが、映画のビジュアルが提示するストーリーは会話と、サウンドトラックと重なり合い、時に競合する音声から成り立っています。