ゴダールの映画史

ゴダールの映画史のレビュー・評価・感想

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ゴダールの映画史
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難解な映像絵画で20世紀史を俯瞰する大作『ゴダールの映画史』

『ゴダールの映画史』は、1980年代後半にジャン-リュック・ゴダールが脚本・監督して1988年に完結した8部構成のビデオ作品プロジェクトです。
ゴダール映画の中で最長で、最も複雑な作品の一つにあたります。
『ゴダールの映画史』は映画(シネマ)概念の歴史と、それが20世紀にどのように関連づけられているかを検証した作品です。
その意味で、20世紀への批判、そして20世紀をその世紀自体がいかに認識したかを批評しているとも考えられます。
このプロジェクトをゴダールの傑作とする評価が広く受け入れられています。
『ゴダールの映画史』は常にフランス語で言及されます。
なぜかといえば、フランス語の「イストワール」は「ヒストリー」と「ストーリー」の2つの意味を持っていて、複数形のsが付されることで「イストワール(s付き)」は「シネマの[複数の]歴史」と「映画の[複数の]物語」を同時に意味します。
類似するダブルあるいはトリプルミーニングはこの映画やその他の多くのゴダール作品で繰り返し現れるモティーフです。
『ゴダールの映画史』は、小説と絵画の要素を併せ持った映画的な絵画だと考えられています。
最初の上映は1988年のカンヌ映画祭のコンペティション。9年後、1997年の映画祭でも再上映されました。