最後の誘惑

最後の誘惑のレビュー・評価・感想

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最後の誘惑
8

己心の煩悩に葛藤するイエス像を斬新に描き出す、マーチン・スコセッシ監督の『最後の誘惑』

『最後の誘惑』は1988年に米国で公開された宗教劇映画で、監督はマーチン・スコセッシ。脚本はクレジットされているのがポール・シュレーダーで、スコセッシとジェイ・コックスがクレジットされていないリライターでした。映画は1955年に発表されて論争を巻き起こした、ニコス・カザンザキスの小説『キリスト、最後の誘惑』に基づいています。出演は、ウィリエム・デフォー、ハーベイ・カイテル、バーバラ・ハーシェイ、アンドレ・グレゴリー、ハリー・ディーン・スタントン、デビッド・ボウイ等。作品はモロッコでのオールロケでした。小説と同様に映画はさまざまな誘惑と闘いながら生き抜くイエス・キリストの生涯を描いており、イエスが闘った誘惑には恐怖、疑惑、抑鬱、躊躇、欲望が含まれていました。それ故に、作品は(映画でも小説でも)性の営みに誘われるキリストを描くこととなり、一部のキリスト教徒の怒りを引き起こしました。映画では「この映画は福音書に基づいたものではなく、永遠の魂の葛藤を虚構的に探求したものである」との但し書きが映し出されます。映画が原作としている小説の場合と同様に、この映画も公開時にキリスト教関係者からの論難に遭遇しました。作品内のエピソードが福音書の記述から甚だしく逸脱していたからです。フィルムは興行収入的には失敗しましたが、批評家や別な宗教関係者からは肯定的な評価を得ています。