ブルーエンゼル

ブルーエンゼルのレビュー・評価・感想

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ブルーエンゼル
7

アクロバット飛行の映像詩、映画『ブルーエンゼル』

米合衆国海軍所属の曲技飛行チームである「ブルーエンジェルス」は米国内を巡業してジェット戦闘機の曲技飛行を披露していますが、この模様を収録して製作されたのが1975年日本公開の映画『ブルーエンゼル』です。当時使用されていた機体は「神々の重戦車」と呼ばれた鈍重な感なきにしもあらずのF4JファントムII戦闘機です。ベトナム戦争時の北爆では北ベトナム空軍のMig戦闘機と死闘を演じて損害も被ったことのある機体で、実際には軽快な運動性能を有しています。元々はテレビコマーシャルやドキュメンタリーを撮影していたポール・マーローは友人と出かけた折りにファントムII・ブルーエンジェルスの勇壮なアクロバット飛行を目の当たりにして映像の素材にする決心をしたそうです。彼がこの映画の製作/監督に収まっているのはこういう事情があるからなのです。マーローが撮影したのは28時間分の「ブルース(=ブルーエンジェルス)」の飛行シーンそのほか、録音したのは飛行時の音声ほか30時間分。これらの膨大な素材から映像的に映えるシーンのみを抽出してわずか90分のフィルムに集約をしました。製作には2年半の時間が費やされて、完成までに資金難の危機に見舞われたこともありましたが、マーローの不屈の精神によって映画は完成されたのです。