男と女

男と女のレビュー・評価・感想

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男と女
9

オシャレな佳作恋愛映画『男と女』

この映画はフランスの映画監督クロード・ルルーシュの名前を高めた傑作映画です。フランシス・レイの映画音楽があまりにも有名になって今日でも頻繁に耳にしますけれども、実はこの映画が1966年の製作であることに驚かされます。1966年と聞かされても、映画のファッションは古めかしさを感じさせず、建造物や風景の映像はヴィンテージ写真のような雰囲気を醸し出しています。その雰囲気はとてもいま風なオシャレ感でもあって、まるで同時代を生きているような錯覚を喚起します。映画の中ではカラーとモノクロームの画面が交互に展開されます。映画製作時の事情を調べてみると予算的な制約による苦肉の策でこのような演出になったことが分かりますが、全編カラーが大前提のデラックスなハリウッド製映画にはない味わいとなっていて、その点がいかにもフランス映画らしいです。この映画で最も微笑ましい場面は、主人公の男女がお互いの子供を連れてレストランで食事をするシーンです。アンヌが映像関係の仕事をしているらしいので、ジャンは「女優はやらないの?」と尋ねると、アンヌは「役者は嘘っぽいから」と返します。ジャンも「そうだね」と同意すると、男女2人は「ふふっ」と微笑み合うという場面です。このシーンを観るものはささやかな幸福感に浸れるかもしれません。