地獄の黙示録

地獄の黙示録

『地獄の黙示録』とは、1979年に公開されたアメリカの戦争映画である。日本公開は1980年。原案はジョセフ・コンラッドの小説『闇の奥』。
舞台はベトナム戦争後期の1969年。主人公の大尉ウィラードはカンボジアでの任務の最中、ベトナム戦争における様々なすさまじい惨状や狂気を目の当たりにする。ベトナム戦争と戦争により精神が疲弊していく兵士たちを生々しく描いたエピックフィルムである。
監督はフランシス・フォード・コッポラ。主演はマーロン・ブランドとマーティン・シーン。
撮影は4年間にも及び、莫大な製作費やキャスティングの紆余曲折、台風による撮影機材の損壊、米軍の協力拒否など数多い障害に見舞われるも、公開後全世界で大ヒットを記録。1979年度のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを獲得し、第52回アカデミー賞では撮影賞、音響賞(録音賞)を受賞。第37回ゴールデングローブ賞では助演男優賞、監督賞、作曲賞を受賞した。

地獄の黙示録のレビュー・評価・感想

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地獄の黙示録
7

天才フランシス・フォード・コッポラの陶酔的な美学ー『地獄の黙示録』

『ゴッドファーザー』3部作でイタリアン・マフィアのファミリーの興亡史を描いて名を挙げたフランシス・フォード・コッポラ監督が、米国史の悪夢であるベトナム戦争の題材に切り込んだ問題作が『地獄の黙示録』です。ポーランド出身の作家ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』を大胆に翻案して現代のベトナムに置き換えて、軍のウィラード大尉がメコン河を遡行してカンボジア奥深くのカーツ大佐の「王国」に辿り着き、カーツを暗殺するまでを3時間以上の尺で描き切った超大作でもあります。この作品が問題作と言われる所以はさまざまにあるのですが、たとえばキルゴア中佐率いる米軍第一騎兵師団の空挺部隊が海岸線からベトコンの集落を急襲する場面は、ワグナーの『ヴァルキューレの騎行』をモチーフにヘリボーン作戦の模様を余すところなく再現して、戦争による破壊の狂気を見せつけてくれるところなど、コッポラ監督の創作における絶頂感をこちらに伝えてくれるからです。この映画自体が製作費を大幅に超過してしまった作品なのですが、破壊の余燼に監督が陶酔する辺りに戦争という行為同様に「浪費」であることを感じさせてくれます。時間とお金に余裕のある方は是非に是非にディレクターズカットその他のプレミアム作品をご覧頂けると天才コッポラの壮大なナルシシズム/自己陶酔を追体験することができます。