ロリータ

ロリータのレビュー・評価・感想

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ロリータ
9

妖しい映像美で作品を観る者を魅了する映画『ロリータ』

映画『ロリータ』は、鬼才スタンリー・キューブリックが監督した1962年製作の米英合作のコメディ映画で、1955年に発表されたウラジミール・ナボコフの同名の小説を原作にしています(ナボコフは脚本執筆者として映画にクレジットされています)。この作品の主人公は中年の文学講師ハンバート・ハンバートで、彼は思春期の少女ドロシー・ヘイズ(そのニックネームが「ロリータ」)に恋をして惹かれることになります。映画に出演するのは、ジェイムズ・メイソン、シェリー・ウインターズ、ピーター・セラーズ。ロリータを演じたスー・リオンは当時14歳でしたがはるかに年上に見えます。さて、当時の映画製作コード(倫理規程)によって課せられた制約のせいで、フィルムでは小説の孕んでいた挑発的な場面がトーンダウンされて、映画を観るものの想像力に委ねる演出がなされています。本作の評価を巡っては映画評が両極に割れました。コードに抵触する描写こそ控えめなものの、映画そのもののテーマが子どもを性的に侮辱するのではないかとの議論が沸騰したからです。映画の検閲がいかにシビアであるかを十分に理解していたら、この作品を製作しようとしただろうかと、キューブリック自身も後年疑問を抱いていたようです。けれども、この映画の脚本は第35回アカデミー賞で脚本賞にノミネートされています。