博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかのレビュー・評価・感想

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
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核戦争の恐怖を描くモノクロでシニカルなSFブラックコメディ!

1962年に人類は核兵器による世界の終末の一歩手前まで追い詰められたことがあります。同年10月のキューバ危機のときのことです。ソ連は盟邦キューバに核ミサイルを搬入して米国との間で一触即発の極限状態に達しました。その冷戦期の状況を背景にして、偶発的な核戦争が起こり、人類は滅亡することになります。滅亡に至る過程を米国側からコメディタッチで描き出した作品です。登場する政治家や高級軍人たちはほぼすべて俗物か異常性格者として設定されていて、この映画は風刺劇の趣きを孕んでいます。鬼才スタンリー・キューブリックがモノクローム映画として撮った最後の作品です。原作は英国の元軍人のピーター・ジョージの『破滅への2時間』というドキュメンタリータッチのシリアスな小説です。キューブリックはストーリーを構成する時点で、題材の核抑止という思想そのものが馬鹿馬鹿しいと考えてブラックコメディとして演出することにしました。
ソ連領内へ2時間の空域で空中哨戒するB52爆撃機アラバマエンジェル号に秘密指令が着電し、暗号解読するとソ連のICBM基地に水爆を投下する任務を命じた文書でした。米ソ間で核戦争が勃発したことに覚悟を決めたB52クルーたちは、指令されたソ連基地に向けて超低空侵入を試みます。一方、この攻撃命令は精神に異常をきたした一将軍の独断で発したものであることが判明して、大統領以下政府と軍の首脳は事態の収拾・打開策に頭を悩ませることになります。