ストックホルム・ケース / Stockholm

ストックホルム・ケース / Stockholmのレビュー・評価・感想

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ストックホルム・ケース / Stockholm
8

緊張感とユーモアのバランスが最高

有名な「ストックホルムシンドローム」の語源である、銀行強盗の事件を題材にした映画です。ストックホルムシンドロームとは、犯罪の環境下に置かれた被害者が、犯人に共感や好意を抱いてしまう心理現象。この映画を見るまでは、そんなこと本当に起きるんだろうかと半信半疑でしたが、映画を見終わった時には、「自分にも起こりうるかも」と思ってしまいました。
本作で犯人を演じるのはイーサン・ホークで、この犯人がとにかく魅力的。銃を手に騒ぎ立てる割には、人質の要望を叶えるために奮闘したり、人質が警察に撃たれそうになれば怒鳴りつけたりと、お人好しな面もあります。例えば、人質のために生理用品を用意しろと叫ぶ場面は、不器用ながらも頑張る犯人が可愛らしくさえ思えてくるのです。それでいて、自分の過去を悔いており、新しい人生を求めてこの犯行を起こしていることもわかります。
人質たちも、彼の人柄に触れることで次第に心を開き、警察よりも犯人を信頼するという構図が出来上がります。人質解放の場面で、犯人の周りを人質が取り囲み、犯人を庇うようにしながら出てきたところが象徴的だと感じました。外から見ているだけでは信じられませんが、彼らの側からしてみれば、当たり前のこと。そして映画の観客たちも、そうしたくなる人質の気持ちが、わかってしまうのです。