機動警察パトレイバー 2 the Movie

機動警察パトレイバー 2 the Movieのレビュー・評価・感想

機動警察パトレイバー 2 the Movie
10

クーデターものの最高峰

1988年にOVAシリーズとコミックを同時スタートさせるメディアミックス作品の嚆矢となった「機動警察パトレイバー」。その劇場版第2作となった本作は、それまでの明るい近未来トーンから一転、硬派なポリティカル・サスペンスとなった。
冒頭、カンボジアと思しき某国へ国連軍として派遣された自衛隊レイバーが、接敵・攻撃を受けても交戦を許可されず全滅する。3年後、ベイブリッジ爆破地面を皮切りに、自衛隊と警察の対立を軸として、治安出動・戒厳状態まで息苦しいほどの緊張を維持しながら展開する脚本は見事。特に「幻の空爆」のシーンは、モニターを通じてしか状況を把握できない現代戦の危うさを見事に描き切っている。遠い他国で行われている戦争をモニターの奥に追いやっている我々との対比も効いている。
作画・美術のクオリティも非常に高く、部隊決起のシーンでは戦車や対戦車ヘリコプターにより見慣れた景色が徹底的に破壊される様を通じ、モニターの中に押し込めていた戦争が現実となって我々に襲いかかる様を印象付けることに成功している。徹底的にリアリティを追及している半面、おなじみの特車2課の面々やレイバーの活躍は抑えめで、旧来のファンからは不満もあろうが、これほどの映像体験を見せつけられれば文句はあるまい。こんにちでも十分通じるテーマ性を持った、押井守監督入魂の一作である。