モートン・ヴァレンス / Morton Valence

モートン・ヴァレンス / Morton Valenceのレビュー・評価・感想

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モートン・ヴァレンス / Morton Valence
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モートン・バレンスの旅は続く

モートン・バレンスは、英国ロンドン出身通称ハッカー(ロバート)と北アイルランド出身のアンから成る稀有なインディーバンド。バンド名は英国に実在する小さな街に由来する。2人の歴史は2005年頃から始まり、計7枚のアルバムをリリース。他メンバーは度々入れ替わってはいるが、ハッカーの作詞作曲とアンの美しい歌声、主軸は常にここにある。
英紙ガーディアンで「この地でかなり興味深く魅力的なバンド」と評された事もあるように、彼らは自分達の身の丈で独創的な世界を創り続けているように見える。この世に溢れている商業的な音楽とは一線を画し着飾ることのないパフォーマンスと時折出会う愛嬌のある歌は一聴の価値がある。
例えば、「A Tear for Every Year(Another Country)」の出だしは、Old leather jacket still hangs by the door, it’s been out of style and come back around once more. 未だにドアのそばにかけてある古いレザージャケットは、流行が過ぎ廃れたが、時代は巡り再び流行りが訪れた、というラインから始まる。これにはついにやけて、あるあると頷いてしまう。他にもタイトルだけでつい笑顔になってしまう「Table for One」おひとり様。「Chandelier (Bob and Veronica Ride Again)」「If You Are the River(Me & Home James)」「Hey Misty(Bob & Veronica's Great Escape)」などはラブソングでありながら陳腐にならず美しい映像を彷彿させる微妙なところがあっぱれ。素晴らしいアイデアを持っている彼らには今後も美しくて奇妙な独特の世界を描いていってほしいと願う。