嶋野百恵

嶋野百恵のレビュー・評価・感想

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嶋野百恵
8

ひとつ芯の通ったR&Bシンガー

90年代後半のR&Bミュージックが興隆を見せはじめた時期にデビューした嶋野百恵。
この頃は世界的にも、HIP HOPやR&Bなどのブラックミュージックが流行の音楽の主流になりはじめた時期です。
日本でも宇多田ヒカルやMISIAがヒットをリリースして、ブラックミュージック市場が盛り上がりを見せていました。
それに乗じて多くの女性R&Bアーティストが登場。
巷にも、B系と言われるアメリカのR&B、HIP HOPアーティストからインスパイアを受けたファッションが溢れかえります。

そんな中にあり、ひとつ芯の通った存在感を感じたのが嶋野百恵です。
彼女のルックスはいかにもソウルディーバというものではありません。
肌も黒くないし、ドレッドヘアーやアフロヘアーでもない。
海の向こうからやってきた流行の音楽に魂を売り渡してはいなかったのです。
あくまでも自身の音楽のジャンルとして、R&Bをやっているのであり、ソウルディーバになりきることを目標としているのではない。
そんな印象を受けました。

そして、嶋野百恵は自立した女性の等身大の恋を歌います。
R&Bというものは、恋の相手への熱情を歌う音楽です。
刺激的であり、盲目的であり、依存的。
そんな甘く苦しく、セクシーな愛の歌がR&Bの持つ魅力となっているので、嶋野百恵の楽曲が少し物足りなく感じるのも事実です。
しかし、彼女の音楽にはドラッグのような中毒性がないかわりに、洗練された情緒があります。
相手の男性にメロメロになってしまうようなタイプではなく、対等に渡り合う形の愛が詩的に表現されているように思います。

面白いのはライムスターのmummy-Dと共演した"Lesson"。
ライムスターとはプライベートでも交流があって仲が良いようですが、この曲で見せた息の合ったコンビネーションは痛快です。
自分の足でしっかりと立っている嶋野百恵だからこそ、男性ラッパーとの掛け合いを自然に感じさせることができるのではないでしょうか。
また、友人関係が功を奏してか、mummy-Dがリリックの中で、嶋野百恵の代表曲"Hot Glamour"、"45℃"、"Jr. Butterfly"などの曲名を織り込んでラップしているところにはニヤッとしてしまいます。