婚約破棄から始まる悪役令嬢の監獄スローライフ

婚約破棄から始まる悪役令嬢の監獄スローライフのレビュー・評価・感想

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婚約破棄から始まる悪役令嬢の監獄スローライフ
10

転生もの? いいえ、ただのギャグです

婚約破棄。悪役令嬢。監獄。このキーワードを見て、まず思い浮かべるのは乙女ゲーに転生とかそういう物語か、という予想だ。
しかし、この作品は見事にそれを裏切ってくれる。
まず、この物語の主人公レイチェルは元日本人の転生者ではなく、何の変哲もない(?)公爵家の令嬢であり、王家からたっての願いで王妃として迎え入れられる予定の令嬢である。
性格に難があるかと言えば、それはYES。彼女はフィクサーだ。
そもそも、彼女が投獄された理由は冤罪である。レイチェルの婚約者、エリオット王子に横恋慕した男爵家の令嬢、マーガレットの策謀により失脚させられたのだ。
しかし、彼女はその策謀を事前に察知していながら、それを王妃教育から逃げるために利用しようと画策し、先手を打って自分が入れられるであろう牢獄にあらかじめ物資を運び込み、監獄で優雅なニート生活を始める。
この時点ですでにいろいろおかしいが、これがこの物語の冒頭の出来事である。

そう、冒頭なのである。

それからの彼女は反省を促そうとする王子やその取り巻きをからかい、恥をかかせ、さらには牢番に賄賂(酒)を贈りいつでも脱獄できる状態で料理の出前まで注文する。
彼女の家族は娘が投獄されたと知ると家が取り潰される危機、王子の命が危ないと卒倒しかける。
そして国王夫妻は、視察先であまりの事態に温泉地に逃げ込んで事態の収束(=レイチェルのガス抜きが終わる)まで静観を決め込む。

基本的に物語は全編王子とその取り巻きが酷い目に合うだけなのだが、毎回違うベクトルで仕掛けられるレイチェルの悪行(?)は想像の斜め上を行く。
さらにレイチェルの友人たちも一癖も二癖もある人物ばかり。特に取り巻きの婚約者が酷い。
特に、騎士団長の息子の婚約者のエピソードは腹を抱えて笑うレベル。もういろいろと酷い。

そして、気になるコミカライズのレーベルは角川のコンプエース。つまり少年漫画。
恋愛要素は皆無。ただただレイチェルが王子の嫌がらせを撃退し、逆襲していくのを爆笑しながら眺めるだけ。
原作は上下巻であり、コミカライズも全2巻と短いが、逆にそれ以上は冗長ともいえる。
とにかく笑える作品なので一度見てほしい。