ジャッカー電撃隊

ジャッカー電撃隊のレビュー・評価・感想

New Review
ジャッカー電撃隊
1

ただの番場無双

戦隊シリーズの偉大なる原点である『秘密戦隊ゴレンジャー』の後発ということもあり、凄く実験要素の多い尖った作品です。
まずメンバーが五人ではなく四人、しかも改造を受けたサイボーグであり、全員がクライムに何かしらの因縁があるなど、凄くハードな高年齢層向けのスパイ活劇を意識した感じはありました。狙いとしては恐らく前作「ゴレンジャー」との対比から「一人一人を「仮面ライダー」のように圧倒的に強いヒーローにしてしまおう」というものだったのでしょう。
前作「ゴレンジャー」は集団ヒーローの雛形としては凄く出来が良いですが、一方でそれはメンバー間の格差という弊害も生み出しました。
そうした格差を生まないようにするために、四人全員がサイボーグという設定を持ち出したのでしょう。
シリーズでもこの設定は他に「フラッシュマン」位です。
しかし、そうした前作との差別化は悉く裏目に出てしまいました。
四人がサイボーグ(人間ではない)という設定は逆にキャラの没個性化に繋がってしまい、またサイボーグである故に内面に踏み込んだドラマを描くことも出来ず、かといって前作のようにキャラのバリエーションによる個性の強さを押し出すことも出来ない。演出もアクションも地味で子供人気は直ぐ奪われていきます。
そしてこれが一番の問題ですが、後半そんな問題点を解決するためにテコ入れとして投入された番場壮吉は作品を盛り上げる所か諸共沈んでしまう大惨事となってしまったのです。
一人だけ圧倒的に強い全てをこなしてしまう完璧超人を入れてしまったせいで余計に没個性化が進んでしまい、四人のサイボーグとしての苦悩など番場壮吉の脳天気な明るさの前では何の意味も成さず、折角盛り上げるドラマ(桜井とカレンの恋愛など)を入れたのに、それら全て悪い意味で番場壮吉の引き立て役にされてしまいました。
結果として本作は3クールで打ち切り、以後「バトルフィーバーJ」までしばらく待たないといけなくなります。
前作「ゴレンジャー」の大成功の代償を打ち切りという形で払わされた何ともいたたまれない悲劇の産物、それがこの「ジャッカー」です。