M.I.A. / エム・アイ・エイ

M.I.A. / エム・アイ・エイのレビュー・評価・感想

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M.I.A. / エム・アイ・エイ
7

インスピレーションを刺激を与える高いクリエイティビティ

M.I.A.はイギリスの女性アーティスト、マータンギ・マーヤー・アルルピラガーサムによるソロでの活動名です。
この印象的なアーティスト名は"Missing In Action"、日本語にすると「戦闘中行方不明」の略であり、行方の知れない戦闘員の父親を持つことから名づけられています。
というのが設定で、どうやらこれはフィクションの話のよう。
過去に楽曲のプロデュースを手掛け、恋仲にもあったDiploが、「彼女の父親ならイギリスにいて、教師の仕事をしているよ。」と、インタビューで発言していました。
それにしても、こういうアーティスト名を思いつく発想力がすごいと思います。

音楽性は、HIP HOPやダンスミュージックを基調とした斬新なエレクトロニカ。
レゲエや、中東、アジアなどの音楽のサウンドを多用しています。
自ら現地に赴き、機材を持って録音してくるなどして、かなりの行動力とクリエイティビティを発揮。
そして、欧米の主要国ではない、いわゆる第三世界の音楽を取り入れた作風は、共同製作者のDiploの音楽にも見られます。
二人は共通の関心を持つことから意気投合したそうです。
その結果に生まれた"Paper Planes"は最大のヒット曲となっています。

しかし、M.I.A.の楽曲のクオリティが高くなったのは、Diploと決別してからのように思います。
それまでは刺激的、かつ、アーティスティックではありましたが、どこか楽曲に乱雑さがあったのです。
それが独特な味となっていた面もありますが、2013年のアルバム『Matangi』以降の楽曲の方が聴きやすいことは確かです。
2016年にリリースされた『AIM』においては、非常に洗練された仕上がりとなっています。

もとは映像、グラフィックなどのビジュアルアーティストとして活動していたため、ミュージックビデオの方にも創造力が発揮されています。
また、ファッションのセンスが良いのも特徴。
2016年にファッションブランドのH&MがM.I.A.をフィーチャーして製作したキャンペーンの映像は、とても見ごたえのあるものでした。
M.I.A.が歌うカットを中心として、様々な人種のダンサーが次々と登場。
世界の多様性を受け入れるボーダーレスな姿勢が、この映像に象徴されているように思いました。