シリアスとコメディのせめぎ合い
戦隊シリーズの中でも本作は前年の「ダイレンジャー」に比べてかなり「緩い」作りになっています。それもその筈、吉川プロデューサーをはじめ前年の「シュシュトリアン」のスタッフ・キャストがかなり流入してきているのですから。ニンジャホワイト・鶴姫を演じた広瀬仁美も前作のメインキャストの一人でしたし、後半ではその「シュシュトリアン」のパロディ回がある位で、この緩いノリは96年の「カーレンジャー」にも繋がっています。
とはいえ、こうした不思議コメディのノリを長い戦隊シリーズの歴史に導入するのは当時としては博打に等しいリスクであったわけで、実際序盤の作風は私は好きじゃありません。サスケ達が不真面目な印象が目立ちますし、後半は忍びの巻の試練などもあって成長したようにも見えますが、これは元々だらしなかった奴等が急に真面目になった、つまりマイナスからゼロに戻っただけで、ヒーローの物語としてはここから寧ろプラスにしていかないといけません。
とはいえその後半も後半で完全なプラスになったわけじゃなく、精々サスケと鶴姫が真面目になった位で、後の三人、特にサイゾウとセイカイは二人まとめて完全なポンコツ、いじられ役に貶められてしまった感じがあり、また物語も急に鶴姫家にまつわる悲劇の要素が出たり、序盤ではヌラリヒョンが宿敵であるかのように示されていながら、何故かラスボスが妖怪大魔王に変わっていることなど、敵組織たる妖怪側にも一貫性がなく、終始敵も味方も一貫性がないように見えてしまいます。
勿論ヒーロー作品そのものをパロディの対象にしてしまうという手法もあるにはあります。実際「カーレンジャー」はそれをやってのけたのですから。しかし、本作はその点どこまでを「ヒーロー」にし、どこまでを「パロディ」にするかという見極めが非常に甘く、良い点もあるけど年間を通しての完成度はかなり低いように見えます。