心に響く歌が魅力のR&Bシンガーソングライター
ブランディの"He Is"を聴いたなら、その楽曲の美しさに胸を打たれることと思います。
流麗なピアノの演奏がバックに流れるダウンテンポのこの曲は、ブランディの作品の中で最も感動的なバラードだと思います。
胸の内をそっと告白するような歌い出しからはじまって、次第に盛り上がっていきます。
フックではコーラスのハーモニーにうっとり。
クライマックスを迎えると、アドリブ混じりに熱く歌い上げ、それがグッと来るのです。
歌詞の内容は、愛する相手が自分にとっての友達であり、恋人であり、天使であり、王子であり…とまだまだ続きますが、とにかく彼がすべてであり、とても感謝していることが歌われています。
"He Is"は2002年のアルバム『Full Moon』に収録されています。
このアルバムではブランディの輝きが最高潮に達しており、ファンにとっては思い入れがある作品です。
そのため、それから10年がたった2012年にリリースされたアルバム『Two Eleven』のライブツアーでも、『Full Moon』からの曲が何曲か披露されています。
その中には"He Is"も含まれており、ブランディがスツールに腰掛けながら熱唱するのを、観客みんなが深く聴き入っていました。
10年を隔てた楽曲が演奏される中で感じたことは、ブランディが強くなったということです。
以前はプリンセスのようなイメージだったのが、大人の女性としての深みを増していました。
ワイルドになった気さえします。
正直、ブランディがここまで踊るとは思わなかったと感じるほど、ダンスも本格的で大迫力でした。
『Two Eleven』の重厚感を増した楽曲にピッタリだったと思います。
ティーンの頃から自分で曲を書き、歌ってきたブランディ。
1994年にデビューアルバム『Brandy』をリリースしたときは15歳でした。
しかし、15歳の少女の作品とは思えないほどの完成度に改めて驚かされます。
素朴でシンプルな演奏を聴かせ、歌の良さがまっすぐに伝わってくる名盤です。
R&Bのサウンドが複雑化する前の時代に作られているので、一番落ち着いて聴くことができると思います。
それからはR&B音楽のバブルとも言える時期を辿り、様々なアーティストと同様、ブランディも浮き沈みを経験しました。
ヒットチャートの一線を退いてからは、R&Bのシーンにまだ自分の席はあるのかと、新作を作ることをためらっていたという切ない話も。
しかし、成熟した女性の強さを持ってカムバック。
その姿は頼もしいものです。