日本の黒い夏 冤罪

日本の黒い夏 冤罪のレビュー・評価・感想

日本の黒い夏 冤罪
7

メディアリテラシーについて考えさせられる

1995年に起きた松本サリン事件での冤罪事件を扱った映画ですが完全なドキュメンタリーではなく、架空の放送局が取材に来た高校生相手に問題点を語るという形式のドラマになっています。
いまとなっては当時の事件報道や警察の捜査に問題があって第一発見者の男性が犯人扱いされて大問題だったことは常識ですが、事件から5年後に公開されたこの映画で公平な視点で検証されているのは驚きです。
ドラマ仕立てになっているため、中井貴一演じる部長がヒーローすぎて、北村有起哉演じる報道記者のコージが特ダネにわかりやすく突っ走る様子が強調されていますが、実際のところ何が問題だったのかがきちんとわかりやすく描かれていると思います。
遠野凪子演じる高校生記者が、大人ならなかなか突っ込めない鋭い言葉で記者たちにつっかかるシーンは考えさせられました。
同時に視聴者自身もまた報道を疑わずわかりやすい事件性に目を向けすぎたことが反省点として浮き彫りになっています。
寺尾聰演じる冤罪被害者の男性の家族の姿が一番の泣き所で、お母さんは意識不明、お父さんもまともに歩けない状態で連日の取り調べを受け、嫌がらせ電話がかかってくる中で兄妹3人だけで家族力を合わせて戦っている様子は本当に頭が下がるし、反省なくして見られません。
当事者意識を持って観るべき作品だと思います。