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音楽の感動と、アーティストとしての成長の心理描写が素晴らしい
作者の惣領冬実が、かねてから挑戦したいと願っていた、音楽を題材にしたコミックです。
登場人物の心理描写が秀逸で、ストーリーの世界に引き込まれます。
都内の中学生のケイとリノが、大人になってロックスターになるまでを描いた長編で、ラブロマンスだけではなく、アーティストとして自己を確立していく過程が描かれています。
そしてそのストーリーは生半可なものではなく、激しく傷つきながらも成長を遂げていく二人。
「ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨けない。」という作中のセリフが象徴するように、リノとケイは愛し合い、ぶつかりながら大人になっていくのです。
ダイヤモンドは世界一硬い鉱石のため、他の素材では磨くことができません。
このことが男女の関係に例えられていて、唯一無二の恋人という存在を表しています。
読者目線でも、ケイとリノは明らかにこのダイヤモンド同士のような関係なのですが、その関係は容易ではなく、心が揺さぶられます。
同じように感じられる相手に出会ってしまったからこそ、無難で平穏な日々は終わりを告げ、本当の自分で生きるための試練が次々と訪れるのです。
しかし、そんな激動の人生を生き抜いていく二人の姿は強く、憧れを抱かせるもの。
それが音楽の感動を交えて描かれ、この作品を特別な輝きに満ちたものにしています。