ブルーアワーにぶっ飛ばす

ブルーアワーにぶっ飛ばすのレビュー・評価・感想

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10

北関東出身者は涙ちょちょぎれ

女性CMディレクターの砂田(30歳)は東京でハードワークに明け暮れていた。業界の第一線で働き優しい夫もいて充実しているように見えるが、口を開けばキツイ言葉ばかり。そんなとき病気の祖母を見舞うため、親友の清浦とともに大嫌いな地元の茨城に帰ることになる…という内容。砂田が規制する茨城のスナックをはじめ、その北関東の「実家感」がリアル。バリバリ第一線の業界の現場との乖離ぶりが激しい。そんな中での祖母を含む家族とのやりとりは、地方出身者によってアルアルであり、ふと自分の家族や友人のことを思い出してしまう。北関東に限らず、地方出身者は誰もが故郷に近親憎悪を感じ、憎みながら愛しているから。この物語でキーとなるのは新湯の「清浦(きよ)」の不思議な存在。砂田と清浦は大親友で、そのやりとりも楽しい。鬱屈した砂田と大らかに田舎を楽しむ清浦は、非常に対象的に描かれている。実はそれもそのはず…清浦はいわば砂田が内緒にしていた「本当はそうなりたかった自分自身のようなもの」だから。清浦の「正体」については最後の最後で明かされるシーンがあるが、周りの何人かはそれを見ても意味がわからなかった模様。ヒントは前半の少女時代に清浦と遊ぶ砂田のシーンにある。まずは前知識なしにこの「名作」をご覧になるといいと思う。