浅草キッド

浅草キッドのレビュー・評価・感想

New Review
浅草キッド
7

古き良き浅草、昭和の香り ビートたけしの誕生物語

昭和40年代の東京浅草を舞台に、ビートたけしの師匠で芸人・深見千三郎とフランス座での日々の自伝小説「浅草キッド」を映画化。劇団ひとりが監督・脚本を務め、多くの人気芸人を育てながらも、自身はテレビにほとんど出演しなかった「幻の浅草芸人」と呼ばれた師匠・深見や仲間たちとの日々。芸人・ビートたけしが誕生するまでを描いている。
昭和の浅草。大学を中退し、「お笑いの殿堂」と呼ばれるフランス座のエレベーターボーイをしていたタケシは、深見のコントに惚れ込み弟子入りを志願。ぶっきらぼうだが独自の世界を持つ深見から、芸ごとの真髄を叩き込まれていく。
歌手を目指す踊り子・千春や深見の妻・麻里に見守られ成長していくタケシだが、TVの普及とともにフランス座の客足は遠のき、経営は悪化していく。タケシは、フランス座の元先輩キヨシに誘われ、漫才コンビ「ツービート」を結成。深見の反対を押し切りフランス座を出て漫才師として人気を得ていく。
お笑いが舞台からテレビに変わる前の古き良き昭和の浅草。人と人との距離がまだ近かった時代。昭和の浅草の人間模様とお笑いの真髄、最近では見られない芸の世界の師弟関係、芸は見て覚えろと、タップステップを通してテンポよく描かれている。
「ひょっとするとひょっとする」才能を育てた浅草芸人の栄光と影、変わりゆく時代。
深見を大泉洋、タケシを柳楽優弥が演じる。柳楽優弥がタケシをモノマネしすぎないで、時代を駆ける芸人を表現。
時代に取り残されていく師匠の悲壮、時には凛として演じる大泉洋。「芸人だったらいつでもボケろ」「芸人は笑われるんじゃないぞ、笑わせるんだよ」の言葉が響く。歌手をあきらめきれないストリッパーの門脇麦。師匠を支える妻の鈴木保奈美がフランス座に彩りを出している。