真白の恋

真白の恋のレビュー・評価・感想

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真白の恋
10

胸が締め付けられる「初恋」

残雪が道に残る冬の富山県射水市(いみずし)の港町を舞台に、軽度の知的障害を抱える女の子・真白の初恋と、彼女を支える家族の葛藤を描いた人間ドラマです。
真白の初恋相手の東京から来たカメラマンは「いかにも」都会の空気をまとい、真白の従姉は郊外の美容師にありがちなヤンキー感を醸し出し、古い街並みにひょっこりあるお洒落な古民家カフェや、真白の家の家具の配置が実家を彷彿とさせたりと、登場人物や田舎あるあるな背景のリアルな描写はすんなり物語の中に入り込みやすくしてくれます。
ストーリーは「田舎から一度も出たことのない少し変わった女の子が、今まで出会ったことのない男性を好きになって一つ大人になる。」というわかりやすい流れで、前半は初めての初恋にドキドキしている真白がひたすらほほえましく、後半は初恋が叶わない切なさに涙腺崩壊。
知的障害を抱える真白の「どうしたら私は普通になれるの?」とお母さんに聞くところ、他の人とは違うという事が初恋を通して受け入れがたくなる真白の涙はギューっと胸がしめつけられます。
真白が生きてきた中で、一番「普通」に接してくれる従姉の存在には救われますが、真白を守りたいという父母や兄の気持ちも痛いほど伝わります。
「普通」って一体何ぞやと、考えてしまう作品です。