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それでも続いていく人生と旅
「それでも人生はつづく」は、アッバス・キアロスタミ監督の映画ですが、兎に角地味なのである。1990年、30000人以上が死亡したイラン地震の後、この映画の前作にあたる「友だちのうちはどこ?」の出演者の安否確認のため、ある監督とその息子が現地を訪れるというドキュメンタリー風に撮られたお話です。
車で辺鄙な道を行く、監督親子。何処を見渡しても、瓦礫の山。崩れた先に美しく広がる自然。
悲惨な事が起こっても、生き残った人は、生きて行かなきゃならない。これからも人生は続いていくからだ。
悲観的になっている暇さえもない。黙々と瓦礫を片付ける人々。
悲しい出来事があっても、サッカーのワールドカップを楽しみにしている人々。
淡々と流れていくお話の中、人や風景の中に自然に流れゆく空気の様なものを観ている気分になる。
イランという国に行ったこともないというのに、何故か懐かしくノスタルジックな気持ちにさせてくれる。
其処に居る人々でさえ、何処かで出会った人の様な気がしてくるのだ。
人々を撮るというよりは、たまたま其処にカメラがあり、人々の生活が映ったようにみえる自然さに、心強く惹かれるのではないだろうか。
人々の再生と、力強い生を感じる素晴らしい映画だと思う。